CMRI所属の研究者が進めてきている医学研究のご紹介をします。

炎症性腸疾患(IBD)とヨーネ菌の関連についての研究

 クローン病(Crohn’s disease: CD)は潰瘍性大腸炎とともに原因不明の炎症性腸疾患(IBD)の一つとして解明が待たれている疾病です。クローン病は主に小腸や大腸などの消化管にびらんや潰瘍を伴う炎症が起きる慢性の病気です。主な症状には、腹痛、下痢、血便、発熱、肛門付近の痛みや腫れ、体重減少などがあります。また、さまざまな合併症が発現することがあります。クローン病を起こす原因については現在も明らかではありませんが、様々な原因の可能性を示すたくさんの研究報告がなされています。

その一つに家畜伝染病として世界中の酪農に被害を与えているヨーネ病を起こすヨーネ菌があります。これはクローン病を初めてくわしく報告したアメリカの医師クローンが患者の腸とヨーネ病に罹患した牛の腸粘膜の類似性を見て、クローン病の原因は恐らく家畜のヨーネ病の原因菌のヨーネ菌だろうと記載しました。

実際、どちらの腸病変も粘膜が著しく厚くなります。その後、クローン病とヨーネ菌の関係を明らかにしようと多くの研究者がクローン病の病変中にヨーネ菌を見つけようと病理や細菌分離の努力がなされましたが、ごく一部で報告があるばかりでした。しかし、近年高感度なPCR法により分子生物学的にヨーネ菌DNAが多くの病変から検出されるようになりました。しかし、クローン病組織からより多く検出されたという報告がある一方で、クローン病以外の、潰瘍性大腸炎やIBDではない腸組織からもヨーネ菌DNAが見つかることから、ヨーネ菌は関係がないのではないかとの意見もあります。

私自身もクローン病、潰瘍性大腸炎、IBD以外の腸組織からヨーネ菌DNAのPCR法での検出を試み報告していますが、やはり同様の結果でした。ヨーネ病は我が国以外の殆どの国で猛威を奮っており、国レベルで強い対策を持っている国は日本以外にはありません。ヨーネ病に感染した牛は感染から発症まで数年からそれ以上の潜伏期間を経て下痢を起こして、下痢便中に大量の菌を排泄しますが、同時にミルク中にもヨーネ菌が出てきますので、子牛に伝染させたり、牛乳の汚染の原因となります。実際には、下痢のひどくない感染牛でも牛乳中に菌が排泄されることがわかっています。

ヨーネ菌は結核菌やハンセン病の病原体と同じ「抗酸菌 Mycobacterium」の仲間で、菌はたくさんの免疫修飾物質を含んでいます。この免疫刺激や修飾作用をうまく活用したのが、①免疫に用いるアジュバント成分、②丸山ワクチン、③膀胱がんなどのBCG療法などその免疫活性を利用したものがあります。しかし、このアジュバント成分が身体にどのような影響を与えるのか、それぞれの人の免疫の遺伝的背景(体質)と摂取経路などにより様々で未解明の部分が多いのです。